す
■ すいとん
戦中・戦後の貧窮時代に、毎日食べていたという食品。
こればかり食べ続けたせいで栄養失調になって、顔から白い粉が吹き出たり 下痢をする日が続いたというから、医者に「内臓は恥ずかしいほど丈夫です」と太鼓判を押された吉行さんでなかったら、
とっくに死んでいたかもしれませんね。
こういった「すいとんの日々」だった頃ですら、周囲の人間から懐はあたたかいと思われていた吉行さん。
う~ん、さすがです。
■ 睡眠薬
これから睡眠薬を使って、眠ることにする。二年前までは、生まれてから一度も睡眠薬を使ったことがなかった。 といって、寝つきが良いわけではない。
『樹に千びきの毛蟲』より
■ 鮨
吉行さんの場合、寿司でもなく、スシでもなく、鮨。
岡山にある吉行さん懇意の鮨屋には、叔父(謙造)専用の盃があって、それは「蝉の羽のように薄くてデリケート」だったとか。
吉行さんも同じ物を出してもらった飲んだら、その感触がすばらしく快かったらしい。
たしかに旨そうですね、薄い盃。
吉行さんは鮨にこだわりがあって、「平貝は必ず握りで食べねばならない」という。
すし種で一杯やってみたら、「薄い甘味がうるさくてよくなかった」らしい。
握りにしても、海苔は禁物とも。
ちなみに、この鮨屋はまだありますが、ご主人は亡くなられて代替わりしています。
吉行さんいわく、主人が代替わりしたら 違う店になる、らしいので、今はどのくらい昔の雰囲気が残っているのか・・・な?
■ ストッキング
吉行さんは、ストッキング=女性の精神と密接につながりがあるもの、とみなしていた模様。
脚の皮はたんなる皮で、ストッキングはもっとデリケートな第二の皮、と推測している。
バーで女の子のストッキングをつい破ってしまったときに、 いつもは静かな女の子が金切り声をあげて怒ったのが印象深かったようです。
女性のみなさん、どうでしょう、第二の皮でしょうか??
■ スピッツ
犬の種類のひとつ。
体は35cm前後、体重は10kg前後の白い長い毛で覆われた犬。
目と鼻が黒いのが特徴。
日本では1950年代に大流行し、金持ちの奥さんやお嬢さんが散歩をさせているイメージであったようだ。
この犬が、吉行家でも飼われていた。
時期は、流行していた時期と重なる1955年、市ヶ谷で吉行夫人と同居していた頃の ことであった。
■ スピード
雑誌社で働いていた頃、吉行さんが好きだった詩人の女性が、「くどくときにはサーッと車で連れ去らなくちゃだめよ」と アドバイスしてくれたとか。
車はともかく、ある程度以上のスピードで流れを進めていって、女性側に「くどかれた」「いつのまに」 という気持ちを抱かせるといいようです。
■ スノッブ
吉行さんの定義によると、スノッブとは「上品ぶる俗物」とか「いなか紳士」ということになる。
かといって、この状態を恐れ嫌悪してアンチ・スノッブのつもりで振舞うと、その態度がそのまま「裏返しのスノッブ」になる、 というのが吉行さんのスノッブ感。
そして、そのスノッブに対して熱く反応するのも、同レベルということに。
なんにせよ、「ひけらかす」という感じになったり「知識が宙に浮いてしまう」のはよろしくない。
「地に足がついている人物は、あまり小うるさいことは口にしないものである」(『犬が育てた猫』)という吉行さん。
と定義しつつも、対談でワインリストを見たりして「オレもスノッブになった」と言っていたけれど。